トランプのビットコイン夢

ビットコインにおける愛国心の逆説

私は仮想通貨界で多くの大言壮語を見てきた。データに基づくものもあれば、空気感だけで語られるものもある。しかしトランプ氏がビットコイン2024で『アメリカで採掘し、製造し、自国産として創出する』と発言したとき、私は抹茶をこぼしそうになった。大胆？確かに。現実的？そうではない。

これは単なる政治ショーではない。国家の誇りと結びついた経済戦略だ。だが今や数学は『矛盾』と叫んでいる。

関税による逆襲

4月2日、トランプ政権は57カ国に対し関税を課した。中国製品には55％、インドネシア・タイ・マレーシアには24〜36％。これらは抽象的な政策ではなく、リアルなサプライチェーンに直撃する。

中国からBitmainやMicroBTの機器を調達する米国の採掘業者にとっては、ハードウェア費が急騰している。皮肉なことに、最大の敵は競合ではなく自らの政府だ。

トランプ自身の会社であるAmerican Bitcoin LLCも、数か月前に注文した機器に対する高額な関税に苦しんでいる。

新たな希望：米国製機器か？

こうした状況下で注目を集めているのがサンタクララに拠点を持つAuradineだ。同社CEOのラジーヴ・ケマニ氏によると、「採掘業者は政策リスクへのヘッジを求める声が増えている」という。

AuradineはシリーズCで1億5300万ドル調達し、マラホールディングスのような大手企業とも交渉中だ（フロイド・スティール氏ら戦略的投資家が関わる）。

しかし問題はここにある：米国製機器であっても……採掘業者はその価格を支払えるだろうか？

実際の戦いは電力—AIが勝ちつつある

ビットコイン採掘とはハードウェアだけでなく電力にも依存する。そして今やAI企業がより高い料金で電力を奪っている。

米エネルギー省によれば2028年までにAI消費電力は家庭用電力全体の最大22％に達すると予測されている。

採掘業者は単なる競争ではなく、「電力網」そのものの獲得戦争をしているのだ。「誰かより早く動ける鳥」—CoinSharesのクリス・ベンディクセン氏の一言である。

Riot PlatformsやCore Scientificといった企業はすでにAI基盤へシフトしている。CleanSparkだけがBTC専門として残っている。

地政学的チェスボード：誰が勝つか？

中国の大手Bitmainも動いている。関税回避のために米国内での生産拠点を積極的に拡充中だ。

「アメリカ製 vs 中国製」と議論している間に既にグローバルサプライチェーンは政策よりも速く進化しているのだ。

90日間の関税一時停止期間（7月まで）終了まで待つ者が多くいる。「どこへ行くのか分からないまま購入するのは怖い」という声が多い。